誕生日は365通りある。なのに、23人集まれば、同じ誕生日のペアがいる確率が50%を超える。教室の後ろから3列ぶんくらいの人数です。
この話を聞いて、素直に「そうか」と思える人はまずいません。だいたいこう思います。「365日あるのに23人? 少なすぎないか」と。半分なら182人くらい必要そうなものです。
この記事では、この問題を実際に20万回シミュレーションした数字で説明します。そして最後に、大事なことを書きます。「そんなに簡単には被らないだろう」というあなたの直感は、間違っていません。あなたが頭の中で解いていた問題では、答えは本当に「182人くらい」なのです。
🎂 人数を動かして確かめる(登録不要・ブラウザで完結)議論の前に数字を出します。「n人の部屋」をランダムに20万部屋つくって、同じ誕生日のペアが1組でもいた部屋の割合を数えました(うるう年なしの365日均等、乱数の種は固定)。
| 人数 | 20万回の実測 | 理論値 |
|---|---|---|
| 10人 | 11.65% | 11.69% |
| 20人 | 41.14% | 41.14% |
| 22人 | 47.59% | 47.57% |
| 23人 | 50.84% | 50.73% |
| 30人 | 70.53% | 70.63% |
| 40人 | 89.08% | 89.12% |
| 50人 | 97.09% | 97.04% |
| 70人 | 99.92% | 99.92% |
22人では50%に届かず、23人で超える。実測も理論もぴたりと一致しました。ここは議論の余地がありません。
むしろ驚くのは30人以降です。40人学級なら89%。日本の教室のサイズなら、同じ誕生日のペアがいるほうがふつうです。50人集まれば97%で、いないほうが珍しい。心当たりのある人もいるはずです。
からくりはひとつだけです。
この問題が数えているのは人数ではありません。「2人組の数」です。
「同じ誕生日のペアがいる」かどうかを判定するには、部屋の中のすべての2人組を総当たりで見比べる必要があります。AとB、AとC、BとC……と。
その組み合わせの数は、人が1人増えるたびにすでにいる全員ぶん増えます。3人目は2組、4人目は3組、10人目は9組を新しく連れてきます。人数は足し算でしか増えないのに、ペアの数は積み上がっていく。
| 人数 | 比べるペアの数 |
|---|---|
| 5人 | 10組 |
| 10人 | 45組 |
| 23人 | 253組 |
| 40人 | 780組 |
23人しかいない部屋に、253組のペアがあります。365日に対して253回の抽選です。この数字を見れば、5割に届いても不思議はないと感じられるはずです。
実際、20万回のシミュレーションで「23人の部屋にできた同じ誕生日のペアの数」の平均を数えたら、0.6909組でした(理論値 253÷365 = 0.6932組)。1部屋あたり0.69組ぶんの当たりが出ている計算です。
もう一つの見方があります。確率を「起きる側」ではなく「起きない側」から数えるやり方です。
部屋に1人ずつ入れていきます。2人目が1人目と違う誕生日である確率は 364/365。3人目が先の2人どちらとも違う確率は 363/365。4人目は 362/365。「誰も被らない」が成立するには、この全員が違いを引き続けなければいけません。
1回あたりの成功率は99%を超えていて、どれも高い。ですが、これを22回かけ算します。かけ算は容赦がなくて、23人目まで来ると全体では49%まで落ちます。「ほぼ確実」を何十回も続けるのは、まったくほぼ確実ではないということです。
ちなみに、現実にはうるう年があります。2月29日を4年に1回の重みで加えて20万回回すと、23人で50.86%。365日均等の場合(50.84%)とほとんど変わりませんでした。日付の種類が増えても、結論は動きません。
🎂 スライダーで人数を動かして、1万部屋を一気に試すここまで読んでも、まだどこか腑に落ちない人へ。その感覚には、はっきりした理由があります。
あなたはたぶん、無意識に別の問題を解いています。そしてその問題では、答えは本当に「182人くらい」です。
その別の問題とは、こうです。
その部屋に、自分と同じ誕生日の人がいる確率は?
「誰かと誰かが同じ」ではなく「私と同じ」。これも20万回シミュレーションしました。
| 周りの人数 | 自分と同じ誕生日の人がいる確率(実測) | 理論値 |
|---|---|---|
| 23人 | 6.11% | 6.12% |
| 50人 | 12.88% | 12.82% |
| 100人 | 24.02% | 23.99% |
| 182人 | 39.49% | 39.31% |
| 253人 | 50.06% | 50.05% |
23人だとわずか6%です。「23人程度で被るわけがない」というあなたの感覚は、こちらの問題については完全に正しい。そして50%に届くのは253人。あなたが直感で出した「182人くらい」に、桁として近いのはこちらです。
違いは一点だけ。自分が比較に参加しているかどうかです。「私と同じ人」を探すとき、比べているペアは22組(自分と他の全員)しかありません。一方「誰かと誰か」なら253組を見ます。同じ23人の部屋なのに、見ているペアの数が11倍以上違う。だから確率も 6% と 51% に分かれます。
| 23人の部屋で | 比べるペア | 実測 |
|---|---|---|
| 誰かと誰かが同じ | 253組 | 50.84% |
| 自分と同じ人がいる | 22組 | 6.11% |
ここに気持ちのいい符合があります。23人の部屋にできるペアの数が253組。そして「自分と同じ誕生日」が50%に届く人数が253人。偶然ではありません。どちらも「253回の抽選をした」という同じ話をしているだけです。
つまり「23人で50%」に驚くのは、確率の感覚が鈍いからではありません。人は自分を中心にして数を数えるからです。部屋を見渡したとき、まず探すのは「私と同じ人」です。その視点は日常では正しく、この問題でだけ外れる。それだけのことです。
「うちの30人のクラスに同じ誕生日の人はいなかった」——これも当然です。30人でも約3割は被りません(実測70.53%が被る側)。1クラスぶんの経験は、確率の判定材料としては弱すぎます。
試しに、23人の部屋を10回つくるのを20セット繰り返してみました。10回のうち何回ペアが出たかの記録です。
6, 3, 3, 7, 6, 7, 5, 5, 7, 5, 7, 3, 2, 6, 6, 2, 6, 4, 5, 7
理論上は10回中5回のはずですが、20セット中6セットは4回以下でした。10回試して2回しか出ないセットも2つあります。この経験をした人は「23人で50%なんて嘘だ」と確信するでしょう。
確率の話で最後に効くのは回数です。そこで、人数をスライダーで動かしながら、1万部屋ぶんを一気に集めて確かめられるページを作りました。理論の曲線と、実際に集めた点が重なっていく様子が見られます。「自分と同じ誕生日」の確率も並べて表示するので、上の6%と51%の差もその場で確認できます。
🎂 誕生日のパラドックスを動かして確かめる※数値はすべて、この記事のために実際に計算した実測値です。各項目とも1条件あたり20万回の試行で、乱数の種を固定して再現可能な形で計算しています(誕生日は365日を等確率としたもの。うるう年を加えた版は本文中に別記)。理論値とのわずかな差は、試行回数に由来する誤差です。「10回×20セット」は同じコードで別に走らせた記録をそのまま載せています。