3つのドアのうち1つに景品がある。あなたが1つ選ぶと、答えを知っている司会者が残り2つのうちハズレを1つ開けて、こう聞く。「選び直しますか?」
正解は「変える」です。変えれば勝率は 2/3、変えなければ 1/3。有名な話なので、聞いたことがある人も多いと思います。
それでも、多くの人がこう思います。「残り2つなんだから、50%じゃないの?」
この記事では、この問題を実際に10万回シミュレーションした数字で説明します。そして最後に、ひとつ大事なことを書きます。あなたの「50%だろう」という直感は、実は間違っていません。ある条件のもとでは、その直感のほうが正しいのです。
🚪 モンティホール100連を試す(登録不要・ブラウザで完結)議論の前に数字を出します。同じルールで10万回ずつ、2つの戦略を回しました。
| 戦略 | 10万回の実測勝率 | 理論値 |
|---|---|---|
| ドアを変えない | 33.39% | 33.33%(1/3) |
| ドアを変える | 66.47% | 66.67%(2/3) |
ぴたりと理論値に一致しました。変えたほうが、勝率はちょうど2倍です。これは議論の余地がありません。
説明の仕方はいくつもありますが、いちばん短いのはこれです。
最初に選んだドアが当たりである確率は 1/3。
つまり、「最初の選択が外れている確率が 2/3」。
ここは誰も反対しないはずです。3つのうち1つを適当に選んだのだから、外れている可能性のほうが高い。
問題はこの先です。司会者がハズレを1枚開けたとき、この 2/3 はどこへ行ったのか。
消えません。残った1枚のドアに、まるごと移動します。
なぜかというと、司会者は答えを知っていて、必ずハズレを選んで開けているからです。ここが決定的です。司会者は迷っていません。あなたが外していた場合(確率 2/3)、司会者に選択肢はありません。残り2枚のうち片方は当たりなので、開けられるハズレは1枚しかない。だから残るのは必然的に当たりのドアです。
整理するとこうなります。
| 最初の選択 | 起きる確率 | 変えるとどうなるか |
|---|---|---|
| 当たりを選んでいた | 1/3 | 必ず外れる |
| 外れを選んでいた | 2/3 | 必ず当たる |
「変える」という行為は、「最初の自分は外していた」に賭けることと同じです。そして最初の自分が外している確率は 2/3。だから 2/3 で勝ちます。
3枚だと差が小さくて実感しにくいので、枚数を増やしてみます。ルールは同じで、司会者はあなたが選んだ1枚を残し、当たり以外を全部開けます。
実際に10万回ずつ回した結果がこれです。
| ドアの枚数 | 「変える」の実測勝率 |
|---|---|
| 3枚 | 66.70% |
| 10枚 | 90.01% |
| 100枚 | 99.02% |
| 1000枚 | 99.89% |
1000枚のドアから1枚を適当に選んだあと、司会者が998枚を開けて、あなたのドアと、もう1枚だけが残った。その残った1枚が当たりである確率は 99.89%です。
この状況なら、たぶん誰でも乗り換えます。最初に1000分の1を引き当てた自信があるかと聞かれれば、無いからです。3枚のときに起きているのは、これとまったく同じことです。
🚪 実際に100連・1万連を回してみるここまで読んでもモヤモヤが残る人へ。その感覚には、はっきりした理由があります。
あなたはたぶん、無意識に別の問題を解いています。そしてその問題では、答えは本当に50%です。
その別の問題とは、こうです。
司会者は中身を知らない。あなたが選ばなかった2枚のうち、適当に1枚を開けた。
たまたまハズレだった。さあ、変えますか?
この設定でも10万回シミュレーションしました。司会者が当たりを開けてしまった回はゲームが成立しないので除外し、ハズレが出た回だけで勝率を出しています。
| 司会者が中身を知らない場合 | 実測勝率 |
|---|---|
| 変えない | 49.65% |
| 変える | 50.10% |
本当に50%でした。変えても変えなくても、まったく同じです。
ちなみに10万回のうち、33,453回は司会者が当たりを開けてしまってゲームが成立しませんでした。全体の約3分の1です。この「そもそも成立しなかった回」が捨てられていることが、確率が変わる仕掛けの正体です。
つまり、こういうことです。
| 司会者は | 変えたときの勝率 |
|---|---|
| 中身を知っていて、必ずハズレを開ける | 66.5% |
| 中身を知らず、たまたまハズレが出た | 50.1% |
画面に映っている光景は、どちらもまったく同じです。ドアが1枚開いて、ハズレが見えている。違うのは、その1枚がどうやって選ばれたかという履歴だけです。
そして、その履歴によって勝率が 66.5% にも 50.1% にもなる。
だから「50%じゃないの?」という直感は、判断力が足りないのではありません。「司会者が答えを知っている」という条件を、重要な情報だと思わずに聞き流しているだけです。実際その一文は、問題文の中でいちばん目立たない場所にさりげなく置かれています。
この問題が引っかけとして優秀なのは、答えが直感に反するからではなく、勝敗を決める条件が、いちばん地味な顔をして紛れ込んでいるからです。
実際に手で何回か試して、「別に変わらないじゃないか」と思った人もいると思います。それも当然です。
「変える」戦略で10回ずつ、20セット回した結果がこれです(10回中の勝ち数)。
8, 4, 7, 9, 7, 7, 7, 8, 6, 5, 9, 6, 8, 7, 3, 6, 7, 5, 5, 7
理論上は10回中6.67勝のはずですが、20セット中5セットは5勝以下でした。3勝しかしないセットもあります。つまり4回に1回くらいは、10回試すと「変えたら負け越した」という結果になります。
10回程度の試行では、2/3 と 1/2 の差は誤差に埋もれて見えません。差をはっきり見るには、最低でも100回、できれば1000回以上必要です。
これは確率の話全般に言えることです。「自分で何回か試した実感」は、確率を判定する道具としては弱すぎます。ガチャの「爆死した」「引きが良い」といった話も、たいていはこの範囲に収まります。
そこで、ボタン1つで100回・1万回を一気に回せるものを作りました。「変える」と「変えない」を同じ条件で同時に走らせて、勝率が理論値に近づいていく様子をグラフで見られます。
🚪 モンティホール100連(1万連まで一気に回せます)※数値はすべて実際に計算した実測値です。3枚のドアの数値は、上で公開しているシミュレーターと同じコードを10万回試行したもの。ドアの枚数を増やした版と、司会者が中身を知らない版は、同じ考え方をそのまま拡張して別に書いたコードによるものです(いずれも乱数の種を固定して再現可能な形で計算しています)。理論値とのわずかな差は、試行回数に由来する誤差です。