塾でいちばんよく見るのが、この形です。
学校のワークを繰り返し解いている。テストで50〜60点は取れる。 でも、そこから上がらない。
本人は困っています。サボっていないからです。 むしろ、周りより多く解いている。それでも点が動かない。
種明かしをすると、それはいっぱい解いたおかげでできているだけで、 理解はできていないことが多い。
同じ問題を4周も5周もすれば、答えは手が覚えます。 問題文を見た瞬間に、考える前に式が出てくる。 これは記憶であって、理解ではありません。
覚えているのは「この問題文 → この答え」という組であって、 その間にある理由ではないのです。
この状態の生徒は、少しずらされた応用っぽい問題が苦手です。
設定が変わる、数字の並びが変わる、聞かれ方が変わる。 それだけで手が止まります。覚えた組の中に、その形が無いからです。
私はこれを「つながっていない」状態と呼んでいます。 知識のかたまりはあるのに、かたまり同士が線でつながっていない。 だから、少しでも隣に動かされると行き先がなくなる。
2つあります。どちらも1分で終わります。
この状態から抜けるとき、いちばんやってはいけないのが「もう1周する」です。 覚えている組がさらに強く焼き付くだけで、つながりは増えません。
やることは逆です。問題の数を減らして、1問あたりにかける手間を増やします。
10問を1周するより、3問をこのやり方で通したほうが、点は動きます。
誤解されたくないので書いておきます。 周回そのものは無駄ではありません。 50〜60点を取れているのは、その積み重ねの結果です。土台はできています。
足りないのは、周回のあとに理由を通す一手間だけです。 やる量を増やす必要はありません。順番に一手間を足すだけです。
学校でも塾でも「ワークは3周しろ」と言われます。私も言います。 ただ、3周の意味がずれていることがとても多い。
まちがった3周は、60問を3回、合計180問解くことです。 1周目で余裕で解けた問題も、2周目でまた解きます。3周目でも解きます。
1周目で解けた問題を、もう一度解く必要はありません。 できることを確かめる作業に、時間を使っているだけです。
数えてみます。
| まちがった3周 | 正しい3周 | |
|---|---|---|
| 1周目 | 60問 | 60問(うち18問に印) |
| 2周目 | 60問 | 18問(うち6問に印が残る) |
| 3周目 | 60問 | 6問 |
| 合計 | 180問 | 84問 |
半分以下です。そして、できるようになった問題の数はまったく同じか、 むしろ多い。浮いた時間を、印のついた18問の「なぜ」に使えるからです。
やることが60 → 18 → 6 と減っていくのも大事です。 終わりが見えるので、3周目まで届きます。 毎回60問だと、2周目の途中で力尽きます。
もう1つ。ワークを全部やるという前提を、いったん外します。
ほとんどのワークは、問題に難易度がついています。 ついていなくても、だいたいA・B・Cの3段に分かれています。
| 中身 | やり方 | |
|---|---|---|
| Aレベル | 基本。公式や手順をそのまま使う | まずここだけ全部やる。できたら、二度とやらない |
| Bレベル | 基本の組み合わせ。テストの主戦場 | Aが終わってから。印をつけて回す |
| Cレベル | 応用・発展。1〜2問しか出ない | 狙う点数しだい(下) |
順番が大事です。Aができていないのに、Bで悩んではいけません。 Bで詰まる原因はたいていAにあります。
| 狙う点数 | Cレベルの扱い |
|---|---|
| 70点くらい | やらなくていい。AとBを完璧にするほうが点は伸びる |
| 80点くらい | 解けそうなものだけ拾う。5分考えて手が出なければ飛ばす |
| 90点以上 | ここではじめて全部やる価値が出る |
70点が目標なら、Cレベルに1時間かけるのは戦略として間違いです。 その1時間をBの解き直しに回したほうが、確実に点になります。
それでもCが気になるなら、1問だけ答えを覚えていくという手もあります。 理解はしていない。でも、同じ形が出たら書ける。 正々堂々ではありませんが、時間がないときの正しい判断です。
ここが、この記事の最初の話とつながります。
周回を減らして浮いた時間を、印のついた問題の「なぜ」に使ってください。
量を減らすこと自体が目的ではありません。
減らさないと、「なぜ」をやる時間が作れないのです。