「計画を立てたのに続かなかった」。よく聞きます。 そして本人はたいてい、自分の意志が弱いせいだと思っています。
私の見立ては違います。作り方の問題です。
生徒が自分で作る計画は、やっぱり杜撰というか、一時的なものが多い。 その場の勢いで書いたので、勢いが切れたら終わる。 だから私は、計画の作り方から教えます。以下は自分なりのやり方です。
多くの計画は「今日から何をするか」から書き始めます。 これだと、行き先が決まっていないまま歩き出すことになります。
順番を逆にします。
逆算すると、今日やることが自動的に決まります。 そして、決めた量が明らかに無理なら、 その時点で無理だと分かります。これも大事です。 始める前に破綻が見えるので、ゴールか期間を直せます。
ただ、逆算を始める前に、ひとつだけ先にやることがあります。 それを達成したとき、自分はどういう状態になっているのか。 その未来を具体的に想像することです。 ここが曖昧なままだと、逆算しているつもりで、 思いついた手段を並べただけのものになります。
部活で説明します。「次の大会で勝ちたい」。 ここで、いきなり技術の練習に走る人が多い。 でもその前に、勝っている自分はどういう状態か、を想像します。
「最後までバテずに戦えている」。そう出てきたなら、 先に要るのは技術ではなく体力です。 もう一段、具体的にします。 「10kmを40分(1km 4分ペース)で走れる、陸上部並みの走力を身につけたい」。 ここまで来て、はじめて逆算できる形になります。
とはいえ、今すぐ毎日10kmは走れません。だから手前に置いていきます。
最終的に、毎日10kmを余裕で走れる
↑ そのために
1ヶ月前には、5kmを余裕で走れている
↑ そのために
そのさらに1週間前には、1.5〜3kmは走れている
↑ そのために
じゃあ今は、まず何km走れないといけないのか?
ここまで下りてくると、今日やることが勝手に出てきます。
大事なのは、この3つが「なぜそれをやるのか」まで一緒に出てきていることです。 フォームを調べるのは、同じ距離を楽に走れるようにするため。 坂道を選ぶのは、短い距離で心臓に効かせるため。 だから、うまくいかなければそこだけ差し替えられます。
勉強も同じです。 「なんで今このワークを解いているのか」「この問題を解くと何が手に入るのか」。 それが分からないまま、ただなんとなく解いていても、力になりにくい。 ページは進みますが、進んだぶんだけ強くなっているかは別の話です。
逆算は、この「なんで」を全部の作業に自動で付けてくれる手順でもあります。
続かない計画は、たいてい手段しか書いてありません。
「毎日ワークを10ページ」。これは手段です。 3日目に疲れたとき、なぜやっているのかが手元に無いので、やめる理由に勝てません。
私は3つに分けて書かせます。
| 層 | 中身 | 例 |
|---|---|---|
| 背景 | いま何が起きているのか | 関数の応用でいつも崩れる |
| 目的 | どうなりたいのか | 初見の応用でも、式を立てられるようにする |
| 手段 | そのために何をするか | 1日3問。解いたあとに理由を口で言う |
分ける理由は2つあります。
ここが実は一番効きます。 手段しか書いていない計画は、手段が崩れると計画ごと消えます。 背景と目的が書いてあれば、手段を1つ差し替えるだけで続きます。
この形で書くと、計画は短くなります。 1週間ぶんの色分けされた表ではなく、3行になる。
そして3行のほうが続きます。 計画を作ることが目的になっていないからです。
言葉だけだと伝わりにくいので、図にします。 続かない計画と、続く計画のちがいはこれだけです。
左は、手段しか持っていません。だから手段が折れると、全部なくなります。
右は、上に2段あります。だからいちばん下だけ取り替えれば済みます。
右から左へたどると、今日やることが自動的に出てきます。 そして、8月に中2の範囲が終わらないと分かったら、その時点で気づけます。 ゴールを下げるか、期間を延ばすか、手段を増やすか。始める前に決められます。
よくある目標はこうです。
どちらも良い目標です。日付があって、達成したかどうかが後で分かるからです。 「数学をがんばる」はこれがありません。
ただ、これはゴールであって、今日やることではありません。 ここを1本の線でつなぐのが逆算です。
| 例1 | 例2 | |
|---|---|---|
| ゴール(いつ・何が) | 11月の期末で数学70点 | 10月に数検3級 |
| その手前 | 関数の応用で式が立つ | 過去問で6割 |
| 今日 | 関数の応用を3問。理由を口で言う | 1次関数の計算を10問 |
この話、勉強だと難しく聞こえるのに、部活だと誰でもやっています。
「次の大会で勝ちたい」(ゴール)
↓ そのためには?
「後半でバテない体を作る」(目的)
↓ そのためには?
「今日は3km走る」(手段)
誰も、いきなり「毎日ダッシュ100本」から始めません。 何のために走るのかが先にあって、そこから今日のメニューが決まります。 そしてバテる原因が体力ではなく技術だと分かれば、 走るのをやめて、そっちに変えます。目的は変わらないまま、手段だけ差し替わる。
筋トレも同じです。「ベンチプレスを100kg挙げたい」(ゴール)→ 「胸と腕の筋肉を増やす」(目的)→「今日は70kgを8回×3セット」(手段)。 そして伸びが止まったら、重さではなく回数やフォームを変えます。
勉強だけ、なぜかいきなり「毎日ワーク10ページ」(手段)から始めます。 部活で言えば、何の大会に出るかも決めずに走り出しているのと同じです。 3日でやめてしまうのは、意志が弱いからではありません。