塾には完璧主義な生徒がかなりいます。
ノートをきれいに書きたがる。定規をきちんと使う。 そして丸つけが特にひどい。 間違えた問題の答えを、赤ペンで丁寧に写している。
何度言っても聞いてくれないのですが、 答えを写すことに意味はありません。 写経をしている間、頭は何も使っていないからです。 終わったあとに残るのは、きれいなノートと、写した時間だけです。
以下はあくまで私の理想です。そのつもりで読んでください。
あとで自分が読めるなら、それで十分です。 見た目を整える時間は、点数に変換されません。
写す代わりにやることは、間違えた問題に赤でチェックを付けておくだけ。 どうしても何か書きたいなら、これで足ります。
丸つけの目的は、どこができていないかを知ることです。 赤で答えを埋めてしまうと、ノートの上では全部できているように見えます。 情報が消えます。
全部消して書き直すのは、時間と消しゴムの無駄です。
間違えた式も、途中でやめた計算も、残しておいたほうがいい。 あとで「自分はここで曲がったのか」と分かるのは、 消さずに残っている手つきだけです。
スペースを惜しまないでください。 すぐ下や隣に、もう一度解き始めればいい。 途中で止まったなら、続きから解けばいい。
1ページに詰め込もうとすると、 書き直す場所がないから消すことになります。3番と4番はつながっています。
ここが本体です。分からない問題に当たったら、答えを見ます。 見てから、次のことを考えます。
そして次は解けるように、理解できるまでやる。 これが勉強です。
答えを見ること自体は悪くありません。 悪いのは、答えを見て「あー」で終わることと、 それを赤で写して終わることです。 どちらも、次に同じ問題が来たときに何も変わりません。
ここまで書いておいてなんですが、 この5つを全部やれる中学生は、まずいません。高校生でもほとんど見ません。
だから全部やってくださいとは言いません。 1つだけ選ぶなら、2番(赤ペンで答えを写さない)です。
これが一番、時間あたりの損が大きいからです。 そして、やめるだけでいいので、新しく何かを始める必要がありません。 浮いた時間で、5番を1問だけやってみてください。
ここまで読んで気づいたかもしれません。 新しく始めることが、1つもありません。
勉強のアドバイスは、たいてい足し算です。 まとめノートを作れ。単語カードを作れ。計画表を作れ。復習ノートを作れ。 どれも「今より1つ多くやれ」という話です。
でも、1日は増えません。足せば、必ずどこかが削れます。 そして削られるのは、たいていいちばん大事な「解き直し」です。 見た目の作業のほうが、終わりがはっきりしていて気持ちいいからです。
だから、逆をやってみてください。引き算です。
数えてみます。ワークを20問解いて、8問まちがえた日を考えます。
| やめること | 浮く時間の目安 |
|---|---|
| 赤ペンで答えを写す(8問ぶん) | 4〜8分 |
| まちがえた式を消しゴムで全部消す | 2〜4分 |
| 定規で線を引く・色を分ける | 3〜5分 |
| ページに詰めて書こうとして書き直す | 2〜3分 |
| 合計 | 11〜20分 |
毎日11〜20分です。1週間で1時間以上。 しかも、この時間で身についたものはゼロです。写経と作図をしていただけなので。
足し算のアドバイスには、必ず「続ける」という難所があります。 まとめノートを作れと言われて作り始めても、3日で止まる。 そして「また続かなかった」という記憶だけが残ります。
引き算にはそれがありません。「やらない」は疲れないからです。 続けるための気力を使わずに、時間だけが戻ってきます。
浮いた時間を全部使う必要はありません。5秒だけ使ってください。
まちがえた問題の横に、なぜまちがえたかを一言だけ書く。
「計算ミス」「公式を忘れた」「問題文を読み違えた」「そもそも知らなかった」。
これだけで、次にやることが変わります。 計算ミスばかりなら解き直す必要はなく、ゆっくり書く練習をすればいい。 知らなかったが多いなら、解き直しより先に教科書に戻ったほうが速い。
赤で答えを写していると、この分類が絶対にできません。 ノートの上では、全部「まちがえた問題」として同じ顔をしているからです。